他人の空似?

かれこれ20年以上前、私が20代後半頃の話です。客先でおもしろくない事があり、
むしゃくしゃしながら夕暮れ時の大阪・中央環状線の堺市某所を東に向かって運転していました。信号で止まり、ギアをニュートラルに入れ、伸びをしながら大きなあくびをひとつ。あ~~あ、ちくしょう(いや、もっと下品な言葉もつぶやいたかも)。
すると、後ろの方で、クラクションが鳴りだしました。(うるさいな!)音は一向に鳴り止まず、私のイライラのボルテージもかなりのレベルに達した頃、ゴツンと衝撃音が。やりやがったな、ということでドアを半分開け、後ろの普通トラックに道路端に寄るよう手で合図をしました。短気を起こさぬようにと自分に言い聞かせつつ車を降り、口から出かかった下品な言葉をぐっとコラえ、満を持して言葉を発しました。

「おっちゃん疲れてるんか」「何言うてんの、兄ちゃんがバックしてきたんやんか」 「え?!」「兄ちゃんがバックしてきたから、僕がクラクション鳴らしてたのに」先ほど信号待ちをしていたあたりに目をやると、ゆるやかな傾斜になっているでは
ありませんか。今起きたことを瞬時に頭の中で反芻し理解した私。コロッと豹変し、すみません、ごめんなさい、申し訳ありません・・あらゆる種類のお詫びの言葉を矢継ぎ早に繰り出し、ひたすら頭を下げ続けたのでした。
本来なら、殺されても文句は言えないレベルですが、幸いなことに相手は人の好さそうな職人さん風で、「もう・・かなぁんなあ」という言葉を残してトラックに戻って行きました。先ほどの記憶をたどると、サイドブレーキが甘く(あるいは忘れていたかも)、足をブレーキから離して大あくび。バカ。もう、サイテーのバカ。しかし、まいったなあ・・・(まいったのは、そのおじさんの方でしたね、スミマセン(^^;)

それからひと月ほど経った頃だったでしょうか、得意先の弁当店が回転釜を増設するため、ガス屋さん、水道屋さんとの打ち合わせをということで、現場に伺いました。
初対面なので名刺を用意し、「はじめまして」とガス屋さんに名刺を渡そうとして、腰を抜かしそうになりました。目の前にいるのは、ひと月ほど前の、小太りで人の好さそうな、あのおじさんではありませんか。(うわっ!!!)
いぶかしがるような表情でマジマジとこちらを見るおじさんに、なぜかうろたえまくる“初対面”の私。打ち合わせ時には務めて平静を装い、白い帽子をより深く被り、あたりを確認するふりをしてキョロキョロと視線を泳がせて目が合わないようにしたり、とあらゆる努力を払うのでした。あの時はスーツ姿、今回は作業着に帽子。多分バレていない、きっとバレてはいない、バレてたまるか。希望的観測を強く強く持ち無事仕事を完了させました。人を責める前にまず我が身を振り返れ。耳の痛い言葉です。運転のみならず何ごとも上機嫌で行いたいものですね。

次の記事

必死なのですⅡ