スマ~イル!

聞くところによると、天使は一人二人と数え、悪魔は一匹二匹と数えるそうです。
天使は近くに、悪魔は避けたいという心理が透けて見える人間臭さが面白いですね。

気の重い案件に対応するため足取りも重く、事務所から地下鉄の最寄り駅まで歩いていました。道中、最近できたばかりの整骨院の院長先生が表に出て、道行く人たちにおはようございますと挨拶をしている光景に出くわしました。なにしろ信号2つ分約300mほどの間に整骨院が4軒というコンビニ以上の過当競争。あえてこの場所に開院するのは、よほど腕に自信があるのかまたは無計画なのか。車で通りかかっても、同じような時間帯には必ず表で挨拶をしている。きょうび先生といえども“営業活動”は必須なのでしょうか。目が合うのを避けるようにそっと院長先生の容姿を確認すると顔は浅黒く日焼けし、ごつい躰は典型的な柔道体型。投げ飛ばされたら痛いやろなあなんて思いつつ表情を伺うとさあ、いらっしゃい!という気合全開で笑顔がない。 (センセイ、怖すぎますよ)。

ずいぶん昔まだ20代の頃、落合信彦氏の小説に登場する“スーパージャップ”に感化され、無性にカジノを体験してみたくなり、分不相応な額の現金と、万一のためのカードをお守りがわりに財布にしのばせてラスベガスへと向かいました。観光やショーなどには見向きもせず、ひたすらブラックジャック、時々ルーレットに熱くなり気が付くとコテンパンにやられていました。死にたい・・・などとつぶやきながら歩いていると、同年代と思しきアメリカ人5~6人の酔っ払い集団がゲラゲラ笑いながら向こうからやってきました。ツキまくったのが遠目にもわかるほどの上機嫌ぶり。やがてすれ違う時に、私が死にそうな顔でもしていたのでしょうか一人の女が、「どうしたの!」と叫ぶ。「いや、べつに」と応える私。すると女が更にデカい声で叫びました。“Then,smile(じゃ、 笑いなさいよ)!”言うことを聞く義理はないけど、すれ違ってから無理やりひきつった笑いを作っていました(我ながら、律儀なのかアホなのか・・・(^^;)。

結局、もう一生ここへ来ることはないやろ。よっしゃ、全部いってまえ!ということで、カードの枠いっぱいまでホテルの銀行でお金を借りまくって再度、勝負ッ!不思議なことに今度は小さな負けを挟みながらも大きな勝負ではツキまくり、それまでの負けを一気に取り返してしまいました。緊張が緩んだせいか、マイナスをゼロにしただけなのになんだか大金持ちになったような気分で帰りはホテルから空港までクジラのようにデカいリンカーンの黒塗りリムジンで向かいました。悪魔に魅入られたり、天使がゲラゲラ笑い声をあげ続けたりと、色んな意味で夢のような体験でした。あれから大体25年ほどになるでしょうか。ギャンブルといえば年に一回程度、宝くじを買うかどうかという地味な生活ですが、天使を味方に付け悪魔を寄せつけないためには、やはり笑顔というのがキーワードになるのでは、と思っています。それにしても気の重い案件に笑顔で対応できる器量はいつになったら身に付くことやら・・。

そうそう、整骨院の先生でした。いつか目が合ったら、“スマーイル!”と言ってあげたいですね。風向き、変わるかもよ。