それぞれの正攻法
ゴールデンウィーク中のとある曇りの日、学生時代の友人○イシ君と近くのファミリーレストランで、例によって何を話すともなく時間を過ごしていました。そんな中、今の座右の銘は、との私の問いにおもむろに手帳を取り出し、「う~んっと、今は『考え方が変わると行動が変わる。行動が変わると結果が変わる。結果が変わると人生が変わる』・・かな」 なるほど、いかにも税理士らしい答え。気分次第でコロコロ変わりますが、「武士は食わねど高楊枝」や「乗りかかった舟」なんて言葉が今の私の中の多くを占めている昨今、彼我の違いを改めて思い知らされたような一幕でした。
大学に入学したての頃30年ほど前の話です。新入学生がたくさん集まる奨学金受給に関する説明会の中、離れた席に家具職人の息子のイシ君と、厨房屋のせがれの私がいました。共通点はどちらも裕福ではないということでした。受給に関する書類が配付され、担当者の長い話が続いていました。なんだか面倒くさいなあ。要するに、借りた金は卒業してから返せということか。ややこしい書類を書き込んだ挙げ句結局返済するのなら、アルバイトの時間を増やして自分で学費を支払った方が面倒がなくていいか。そう判断した私、書類も提出せず、その後4年間、学業よりも肉体労働の方へ向かってまっしぐらに突き進むのでした。一方、イシ君はと言えば、刻苦勉励しつつ、割のいいアルバイトもしながら返済の必要のない特待生制度による奨学金を受け、優秀な成績で卒業しました。同じ説明を聞いても、それに対する反応は正反対。お互い、様々な曲折を経て今がありますが、性格の差がそのまま進む道の差となって今に至っています。
そんなことを思い出しながら、税理士が顧問先で「社長、武士は食わねど高楊枝です。そんな
取引止めなさいッ!」とか、「乗りかかった舟です。そのまま一気にいきましょッ!」なんて言ってたら、倒産企業が続出するだろうな、と。身を乗り出すようにしてこの話に乗る私の反応を見て何かを感じとったのでしょう、イシ君、ニヤリと笑みを浮かべて曰く。
「わかった。この話、次のメル・マガに書こう思とぉやろ」 (うっ・・なんでバレてしまった?) 勘のいいヤツは苦手だなぁ・・・。