都道府県民、カミングアウト

少し前のことですが、行きつけの理容店のマスターと話していました。長崎・五島列島出身のマスター、以前里帰りした際、老人ホームに旧友と共にそのお母さんの面会に行ったとのこと。
ひょっとして、と思いつつ、当店のお得意先の施設様名を告げると、まさにそこでした。
「大きくてきれいな施設だったで」 お世話になりながらも伺ったことのない施設さんのことを想像しつつ、偶然を楽しんでいました。中学生の頃は悪ガキだったそうですが、現在では議員をしている旧友から、帰省するたびに近所の神社への寄付を求められるそうです。「また寄付、頼まれた」と言いつつも、まんざらでもない表情。恐らく故郷に錦を飾る、の心境なのでしょう。

東京と同様、大阪も地方からの出身者がその多くを占めています。詳しい数字は知りませんが、三代遡っても大阪人という人など、少なくとも私の周りには一人も見あたりません。そこで、このコーナーに登場したことのある人物の出身地について思いつくままに振り返ってみると・・・

プロボクサーになる、社長になる、神戸の夜景の見えるマンションに住む、など子どもの頃に描いた夢を多少の違いはあっても持ち前の勤勉さで全て叶えたバンコク在住で中学以来の友人、T君の両親は岡山出身。大学時代の友人で、私の交友関係ではほぼ唯一のインテリ系の税理士O石君。家庭の事情から、特に気合いを入れてアルバイトと勉学に励み、返済の必要のない特待生奨学金を受け無事卒業しました。月日は流れ、数年前には行ったことも見たこともないのに函館に投資用マンションを買うほどに。思惑が外れそれが値下がりすると見るやすぐに損切りして売ってしまいました。そんな思い切りのよいイシ君のところは広島出身。父親の遺骨を分骨してもらって会長室の棚に祀り、おやじ、今日も(練習生たちを)守ってな、と毎朝掌を合わせるキックボクシングジムの会長・K君のところは石川(福井だったか?)出身。関西国際空港の某飲食店に冷蔵庫を納品しようとしたが、寸法がわずかながらオーバー。眉ひとつ動かさず持って帰って切ろうと提案し、後日何事もなかったかのように収めてしまうワイルドな職人Yさんのところは、鹿児島出身。また、第一世代では、中学卒業と同時に五万円を握りしめて大阪に出てきて、けた外れの労働と倹約でかなりの資産を築き、今では好きな仕事だけを選び、趣味で畑仕事と搬入屋の仕事をしているKさんは愛媛出身。メモリ機能などは使わず(使えず?)、トラックの車内を電話帳代わりにし、私の携帯番号も天井にマジックで書かれていたのを思い出します。そんな個性豊かな人たちの中では凡庸なる一つの個性に過ぎない私の両親は徳島出身。暑さがピークを過ぎたら、また今年も日帰りでご先祖さんに挨拶に行く・・・いや、帰るとしましょうか。

最後に。秋からのマラソンシーズンに向けそろそろ追い込み練習を、と聖地・長居公園に行く機会が増えてきました。ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、昨年の夏、九州からここで開かれた野外イベントにやって来た若い女性が落雷により命を落としました。あれから間もなく丸一年になりますが、今なおそこには花やジュースなどが供えられ、掌を合わせる人も見かけます。大阪人、結構あたたかいです。