地味で行き当たりばったりで10年間

昨年12月のこと、お互いに出走した奈良マラソンのことについてマラソンの師匠(特養の施設長)と話していました。師匠曰く、「そういえば長野さん、Bブロックの左の方におったね」(え?この前の神戸でも、3キロあたりで長野さん、もっと(前半から)押していけ!と後ろの方から声をかけられたっけ)「なんでわかりましたん?」
「なんでって、少なくともAブロックやBブロックスタートで首にタオル巻いて、軍手した人間なんか一回も見たことないで」「うっ・・(*^^*)」

今年もマラソンシーズンがやってきました。ほんの酒席での話から始めることになり、ズッポリはまって今年で3年目。タイムはそろそろ頭打ちになってくる頃で、楽しむ余裕などまだまだありませんが、自分なりの味わい方はできてきました。
例えば、先日の神戸では・・

昨年に続き今年も約2万人のランナーが号砲とともにスタートした。神戸の街を、ただ走るためだけに、全部通行止めにしてしまうことの申し訳なさとかたじけなさ。
神戸のみなさん、ごめんなさい。そして、ありがとう。雲一つない晴天に恵まれ、今年も沿道の応援が楽しい。6キロあたりのところでは、沿道でラジカセを胸に抱えたおじさんが体を左右に揺すって踊っているのが見える。はて、どこかで聞いたようなメロディーだが。「Runner」でも「負けないで」でもなく「人生いろいろ」だった。
思わず笑ってしまうと、ラジカセおじさん、してやったりという表情で大きく頷いていた。おっちゃん、ありがとう。
色々と考え事をしているうちに10キロあたりにさしかかった。たしか、昨年はこのあたりで、カニの被り物を被ったオカマのおっさんに抜かれ、その後ろを追うように走るので、沿道からはまるで私まで笑われているかのようなシチュエーションが、
何キロも続いたっけ。あのおっさん、今回も見かけたら、くびしめたろか。ふと左側を見ると、昨年同様、ネオン街から脱走してきたような青いスパンコールのワンピース姿の厚化粧のおっさんが。「わっ!」本当に声を上げてしまった。だがおっさん、今年はカニではなく、イカの被り物だった。う~む・・どこがくびなのかわからん。
しばらく並走していたが離されてしまった。昨年は20キロあたりで追い抜いたが、この一年、おっさんはきっと俺以上にコツコツ距離を踏んできたのだろう。

須磨折り返し地点では東京オリンピック招致の立役者の一人、滝クリ女史の拡大写真をおじさんが持っている。その横に書かれた文字を目で追うと「お・り・か・え・し」。(もお~、関西人って)その他、「足が痛いのは気のせい」「今日のビールはうまいで~」などの看板や、エアーサロンパスなどの私設エイドもあちこちにある。
そうそう、がんばれを文字った「顔晴れ」なんていう看板を見て、思わず笑顔を作ってしまったっけ。好っきゃなあ、こんな言葉。年に一度のお祭りということで、ただ、善意だけで見ず知らずのランナー達にこのような励ましをくれる人たち。新聞、テレビを見ていると世の中、悪人ばかりかと思ってしまいそうになるが、このような人たちの暖かさに触れると本当に救われたような気分になる。日本、バンザイ!だ。

ところで、この2週前には、淀川市民マラソンに出走した。その前日色々とあり、思い出すほどに数名の“困ったちゃん”たちに腹が立ち、ほとんど一睡もできなかった。終盤キツくなってくると、その時のことが思い出され、彼らに対する汚い言葉を
頭の中で反芻し、時に口にしながら走り切り気が付けば自己ベストを更新していた。
今回の神戸ではそれより、タイムは4分ほど落ちている。やはり、感謝や喜びの心よりも、やや不本意な気もするが、怒りの方がパワーになるという点では上なのかもしれない。う~む・・。ならばこの際“困ったちゃん”たちにも、サンキュー!だ。

本年もこのメール・マガジンをご愛読いただき、ありがとうございました。スタートからまる10年が経過しました。いつネタが尽きるかとドキドキ、ヒヤヒヤしながらの10年でしたが、恐ろしいほど地味で、嫌になるほど平凡な毎日を生きているつもりでも、それでも、このページをなんとか埋めることができています。まさに、人生いろいろ・・・なんですね。少し早いですが、皆さま、どうぞよいお年をお迎えください。

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