クロではないけどシロでもない

普段なら「間に合ってるので結構です」と相手に話す隙を与えずに切ってしまうところ、つい先日、疲れていたのか魔が差したのか、その日はセールスの電話に対し翌日のアポを許してしまいました。電話を切ってから、なぜか先刻の強引さに不信感を覚え、ネットでその会社名を調べてみるとやはり、いや、予想以上の悪評で埋まっている。なるほど、やっぱり・・。キャンセルしよ。

平成8年、私が代表になって間なしのことでした。我が国のメジャーな経済団体を思わせる会社から電話があり、翌日来店となりました。来店した担当者によると、各業界の名士が数多く在籍し、毎月一流ホテルでこのように人脈づくりのパーティーが開かれています、と写真入りのパンフレットを見せる。人脈という言葉にすぐに反応してしまうのは、良く言えばヤル気に満ちているから、悪く言えば人脈という言葉のあやふやさや頼りなさを知らない世間知らずゆえ。身の丈に合わない高額な料金も輝く明日への先行投資と、思考停止のまま署名捺印を済ませてしまいました。担当者が帰り契約書を再度見てみると「入会契約」ではなく「リース契約」と書かれており、もらったパンフレットには、自己啓発の類のテープが数十巻並んでいる。おや?さっきのパンフレットのワイングラスを手にした紳士たちは??丁度、税理士のイシ君に電話をする用事があったので、ついでにこの件のことを伝えると、絶対に怪しい、すぐにキャンセルしろとの強い言葉。自分の決断が否定されて大いに不満な上に、契約書に署名捺印までしているのに相手に申し訳ないと思いながらも、しぶしぶ彼の言葉に従うことにしました。

翌日、リース会社からの契約確認の電話を待ち、契約をキャンセルする旨を伝え、そして、件の会社に電話を入れました。電話口に出た営業マンの上司という人物、はじめは物腰柔らかく翻意を促す言葉を並べたてていたのが、既にリース会社にキャンセルの旨を伝えたと聞くや、突然豹変し、当方を半ば罵倒するような口調に変わりました。
「やっぱり、僕のような者は御社の客としてふさわしくないですよねえ」
「当たり前ですッ!契約を守れない人とはおつきあいなどできませんッ!」
「残念ですねえ。でも、クーリングオフ期間以前だと思うんですけどねえ」
「何を言ってるんですか!あなたが入会させて下さいと言ってもお断りしますッ!」
すっかり馬脚を現したやりとりに、笑いをこらえるのが大変でした。その後、イシ君に電話を入れこう伝えました。
「ありがとう、助かったわ。やっぱり詐欺やった」

上記のものは入会ではなく物品の売買契約に関するもの、そして冒頭のセールス電話は、電話回線の工事に関するものでした。結局、工事にかこつけて高額な機械を7年に渡るリース販売で取付けるもののようでした。いずれも、リース契約ということであれば、取りっぱぐれはないし、法的には問題無いということなのでしょう。個人情報の取り扱いに不都合があっただけでとてつもない代償を払わされる時代、法人の情報も少しは保護してくれないものでしょうか。しかしながら、こうやってメル・マガ一回分のネタを提供してくれていると思えばむしろ彼らに「ありがとう」と言うべきなのかもしれませんね。皆さまも、怪しい電話にはご注意ください。

前の記事

お国訛り

次の記事

夜明け前の風景