お国訛り

週刊ダイヤモンドの各地の方言などを特集した最新号を立ち読みしていると香川県の方言で満腹になることを「おきる」と書かれていました。えっ?これって徳島じゃなかったの?小学校1年生の給食の時間、徳島出身の母親が家で言うように、「おなかおきた?」と級友に言って、みんなにからかわれたことがありました。狭い海を隔ててすぐ隣の県なのに、まったくわからない方言ってあるものですね。

その昔、武者修行の旅と称して海外放浪の道中、オーストラリア・ケアンズのホテルでキッチンハンド(皿洗いや雑用)の仕事にありつきました。職を得て一週間ほど経った頃のこと、ウクライナから亡命してきて同じホテルで働くウォーリーというおやじ(60歳代半ば)が上機嫌で私に曰く。“トゥダーイ・イズ・パイダーイ”意味が分からず何度も聞き返す私。おせっかいなほど親切なそのおやじに手を引かれるようにして事務所に連れていかれ、封筒を受け取りました。なるほど、このおっちゃんは“Today is pay day(今日は給料日だ)”と言ったのか、と気づいたのは中身の給与明細を確認した後でした(そのホテルは週給制でした)。

「私は今日(today)病院に行った」と彼らが言ったら、「デイ」が「ダイ」になってしまう彼の国のこと「えっ、アンタ、死ぬために(to die)病院に行ったの?」と英国・米国人ならずとも驚いてしまうという笑い話があるそうですから、よく考えてみれば、このくらいのことは不思議でも何でもないことでした。

ところで、旧ソビエト・ウクライナ出身のそのおやじが若い頃豪州に亡命した理由。「兄貴が仕事に2回遅刻したら、シベリア送りになってしもたから」。更に、ひらがなで書いた方がふさわしいほど強い訛りで、「こみゅにずむ・いず・のぅ・ぐぅっど(共産主義は、アカン!)」・・と、続けていました。あれから27・8年。生きている可能性はあまり高くないでしょうが、あのままウクライナに居たら、勤勉で陽気なあのおやじのこと、シベリア送りにはならなくても、今頃は弾丸に怯えて暮らしていたかもしれません。平和な我が国に改めて感謝です。