無事是名馬
一年前の丁度今頃、近くの診療所を受診し、以前に比べて食がやや細ったり酒量も減
ったようでどこかおかしいように思う、と訴えました。
「いつ頃からですか」「そうですね・・大体、10年・15年くらい前から疲れが取れ
にくくなって酒量も減ったように思うんですけど」
私より少し上の年代と思しき総白髪の先生、にっこり笑い「人間はみんな日々年を
とっていますね。食が細くなるのもお酒の量が減るのも当然のことなんですよ」と
子供に言い聞かせるようにおっしゃる。「あっ!そうかっ!!」冗談ではなく、自分
が日々年をとりつつあることに全く気づいていませんでした。唯一の楽しみを腹八分
目で止めることなどできませんが、十二分だったのを十分あたりで止める日が多く
なりました。
三重からの帰りの道中、久しぶりに奈良にある特養施設長を務める、マラソンの師匠
を訪ねました。昨年12月に入院し、仕事をほぼ通常通りできるようになったものの定
期的に通院していると聞いていました。う~む・・今年は師匠の夢である、ランニン
グ仲間たちとヨットで四国に渡り四国八十八カ所巡礼に向かう年だったはず。夢をあ
きらめたんだろうか・・。訊ねるのをためらっていると師匠曰はく、夢への行動を延
期し、まずは再来年にヨットで四国に渡り、更にその翌年に四国巡礼ランを行うこと
にしたとのことでした。身体への負担を考えて夢を“分割”したそうです。夢の実現
計画はどうやら挫折やアクシデントなども織り込んで立てる必要があるようです。
―健康のためなら死んでもいいー若い頃には、つまらん冗談と一笑に付していたそんな
言葉が、知り合いが他界したり病に臥せったりするのを何度か見たせいか、ここ数年
来胸に響くようになりました。小欄をお読みの多くのお客様方ーそして私もですが
ーは昭和、平成、そして令和と三つの時代を生きることになります。
機械であれば、20~30年ももてば御の字なのに、人間の身体は“使用状態”やメン
テナンスの具合によっては100年も休むことなく動き続けます。この、機械よりはる
かに頑健で繊細で愛おしい身体。どうぞ皆さま、令和の時代も健康第一でお過ごしく
ださい。