腎臓がん(?)体験記ー前編ー

夏の終わり頃、月に一度逆流性食道炎の薬を処方してもらうために通院しているクリ
ニックを受診しました。気さくな、おばちゃ・・・もとい、お姉さんなので、健康上
のアドバイスでももらえたらと、夏に受けた定期健診の「結果報告書」をほんの軽い
気持ちで持参しました。

「ところで先生、この前受けた検診の結果ですねんけど、こんな感じでした」
「え~っと・・大きな問題はなさそうですね。膵臓(血清アミラーゼ)の値がほんの
少し高めやけど、(膵臓の)ホンマに悪い人はこんなもんと違いますからね。でも、
もし心配やったら念のためにエコーやっときます?」「(今はコロナでヒマだし)
あ、やったことないんで、お願いします」・・ということで検査となりました。

日を改めて受診し、検査の結果を聞くために診察室に入ると、普段は陽気な先生が少
し困惑したような表情で「膵臓も肝臓も問題なかったんですけど、腎臓に腫瘍が見つ
かりましたよ。血流があるみたいやし、もしかしたら悪性の可能性もあるかも・・」
言葉の意味が瞬時には理解できず、しばしの沈黙の後、ようやく意味を理解すること
ができた私が「あの・・がん・・ですか?」「まだ悪性と決まったわけではないです
から」と、設備のある病院でのCT検査を勧められました。改めての検査では、下部
に2cmほどの悪性の疑いが極めて高い、そして上部には良性悪性不明の1cmほどの腫
瘍が確認されました。

以降、ベルトコンベアに乗せられたように、様々な検査、入院、手術などの段取りが
決まっていきました。検査によると、早期がんの疑いで転移はなし、との判断で命の
心配は、まずなさそうでした。そうと知るや入院というはじめての経験ということに
加え、なんだか日常生活すべてが煩わしく思えて仕方なかった時期だったせいもあっ
て、入院が楽しみで仕方なく思え、持ち込む本やCDの準備をいそいそと始めました。

コロナで面会なども全て禁止。誰とも会わずにぼ~っと過ごせるなんて何十年ぶりだ
ろうと、周囲の心配をよそにワクワク感が止まらない。ただ一つ厄介なのは、世の中
を渡っていく上での仮面は被っていはいても、実は好き嫌いの多い未熟者ゆえ、反り
の合わない人と一緒になる可能性のある相部屋は避けたいという贅沢な悩み。色々と
思案を巡らせていて、ふと勧められるままに加入した保険のことを思い出しました。
保険証券の入っている封筒の束をFP2級に合格したばかりの妹に手渡すと「え~っと
これは一日4,500円。ちょっと安いな。・・で、これはがん特約付いてて5,000円。
まあまあやな。それから・・・(以下略)」
なんだかよくわからないけど、個室の予算は確保できたようでした。(後編に続く)