本当はアウトかも。だけど、ありがとう。

かれこれ20年ほど前の平日夕刻、市内中心部に出るため地下鉄の最寄り駅で切符を
買おうと券売機前で料金表を確認中のことでした。改札口から出てきた小さな子ども
を連れたおばあさんが通りかかり、「お兄さんこれ、よかったら使って」と何かを私
に手渡します。地下鉄一日乗車券?意味が分からずどう反応していいのやら戸惑って
いて、お孫さんと楽しく一日を過ごし、もう使う予定なしとなったので私にくれた
のだろうということにようやく気づきました。もらった一日乗車券を右手にしなが
ら、「ありがとうございます」・・二人のうしろ姿に頭を下げていました。

これも同様15年ほど前のこと。キタで飲んでいて気づいたら終電が出た後。若い頃
なら平日でも自宅まで3時間ほどかけて歩いて帰ったものですが、翌日の仕事のこと
を考えるとやはりここはタクシーという結論に。財布の中を確認すると、夏目漱石
さんが二人と小銭が数枚。(しもたぁ・・飲み過ぎた)梅田から自宅までは夜間割増
料金を合わせると漱石さん5人ほどが必要です。仕方ない、このお金で行けるところ
まで行って、あとは歩こう。そう決めると客待ちしていたタクシーに乗り込んで行先
を告げ、「あのぉ、お金ないんで2,000円のところで止めてください」と付け加えま
した。なんだかんだ話しが弾んでいましたが、天王寺を過ぎたあたりで予算オーバー
となりかけているのに気づきました。「あ、運転手さん、お金無いんでこの辺で止め
てください」「いや、いいですよ」「え?いや、でも」
私を乗せた車はそのまま進み続けます。やがて車は私の自宅近くに止まりました。
2,000円をまず支払い、「ちょっと、家帰ってお金とってきますわ。ここで待っとっ
てくださいよ」「いやいや、いいですよ」タクシーは行ってしまいました。

先日、長居公園30キロ走を終え、疲れを癒そうとそのまま車で健康ランドに赴きまし
た。入場券を買おうとしていると見知らぬおばあさんが「お兄ちゃん一人?」と尋ね
てきます。「え?そうですよ」と答えると「ちょっと待ってな」と言いながらカバン
の中を右手で探りながら「300円出して」と言います。「あれ?おかしいな、どこい
ったんやろ・・」とおばあさん。目の前で何が起きているのか理解できずに突っ立
っていると、「優待券」と書かれたものがカバンの中から出てきました。
ここは敬老優待券を持参すれば通常1,800円のところ、1枚で複数人が特別割引価格
で入場できるシステムだったことに気づきました。カウンター内に居た店員さんは、
あっち向いていてくれました。

物騒で暗く憂鬱な気持ちになるニュースばかりが耳に入ってきます。そんな現実から
目を背け、見ず知らずの人たちの親切に触れたことを思い出してみると、少しはあた
たかい気持ちになれるような気がします。

前の記事

それから