春なのに、春だから
春!・・・ということで、気持ちも新たにお稽古事などをはじめる方もいらっしゃるかもしれませんね。書店に並ぶ、英語会話はじめ様々なテキストの販売も、夏を迎える頃には半分程度になってしまう、と以前聞いたことがあります。自分に合わなければ止めてしまうのも、時間という限りある資源の活用法上決して悪いことではないと思うのですが、短期間で何らかの効果が現れると、継続の原動力になり、その後の思考形態にも影響を及ぼすこともあります。
30年ほど前の春のこと、ふとしたきっかけでボクシングジムに通いはじめました。入門後2・3週間ほど経ったある日、公園にツッパリ高校生風の7~8人と、中学生(もしかして小学生?)くらいの男の子が2人いるのが目に入りました。なんだか妙な取り合わせだなとそのまま自転車で横を通り過ぎかけると、中学生風の男の子2人がポケットから財布を取り出し、悪ガキどもに差し出している。(わっ、恐喝!)
思わず自転車から飛び降り、その中に割って入りました。そして、これこれ、キミたち何やってるの、返してあげなさいよおばかさん、という意味の言葉をちょっぴり下品な大阪弁で、ほんのちょっと大きな声で彼らに投げかけてみました。こちらの勢いに驚いたのか、財布が無事2人の元に返ったのを見届け、弱い者イジメばかりしてちゃいけないよおばかさん、という意味の大阪弁をほんのちょっとだけボリューム・アップして再度彼らに投げかけてその場を後にしました。
ジムに通い始めて世界一強くなったような錯覚を抱いてしまった元・イジメられっ子。ジャブしか教えられていない超初心者であるにもかかわらず、昔の鬱憤を少しばかり晴らすことができ、ヒーローにでもなった気分に浸ることのできた一場面でした。もちろん、有形力を実際に行使したら、間違いなく返り討ちに遭っていたのは言うまでもありません。
この世の中を渡って行くのに最も必要なものは勇気と自信。その根拠となるものは多分、勘違いと思い込みだろう、と信じるようになった原体験でした。
時は流れて30年後。公私ともに、ダメだなぁ~、とため息まじりに自分を振り返り、周囲を見渡す機会が以前に比べて増えたような気がします。コツコツと実績を積み上げて自信をつけていく王道を歩む人が多い中で、この人の自信の根拠は一体何なんだろうと思えるー要するに口だけのー人を見かけることがあります。以前なら、正直なところ軽蔑の目を向けていたこの種の人たちに対し、今では世間での評価とは逆に尊敬の念を抱くことすらあります。もちろん、そのような人になりたいとは思いませんが、勘違いする能力ってある意味で幸せへの近道なのでは、と思います。年と共に、心も形を変えていくもののようですね。