小市民がゆく

昨年、7月には「あの頃の自分に逢いに行こう大作戦」などと年甲斐もなく舞い上がっ

てしまい、35年ぶりにオーストラリアを訪れ念願のゴールドコーストマラソンを走る

ことができました。これさえできればあとは何もいらない・・・そう思っていました

が、今では国内でいいからせめて年に1回くらいはどこかを走ることができたら、しあ

わせだろうなと思っています。

先日、朝事務所周辺の掃除をしていると以前このコーナーにも登場の毎年郷里の岡山

から届くぶどうのお裾分けをしてくれるお隣さんの老婦人に声をかけられました。ご

主人が死去し、息子さんたちは遠方で暮らしているためか、笑顔もいつも寂しげに見

えるのですが、この日はまるで少女漫画のように瞳を輝かせています。

「うれしいわあ。ありがとう」「え?なんか、ええことありましたん?」

夫人は半年ほど前に眼科で白内障と診断されました。それならば心配無用。私の母親

(事務所に居るもう一人の長野)もつい数ヶ月前に手術したばかりであっけないくら

い簡単に済み、痛くも怖くもありませんよ。なんなら、自分が(眼科まで)車で送迎し

ますよ、という会話を交わし、そして母親が直接手術経験談を伝えたことがありまし

た。決断には少し時間を要したものの、意を決し先日ついにとのことでした。

「テレビ観ても、空見ても、ほんまにきれいわあ。ありがたいわあ」聞けば、テレビ

の色が悪いため買い替えようと思っていたけど、その必要もなくなったとのことでし

た。どちらかと言うと口数の少ないタイプの人なのに喜びの言葉が止まりません。

私はただ「よかったですね」と繰り返すだけ。車での送迎は不要で、術後は約1キロ

ほどの道のりを歩いて帰宅できたとのでした。

世のため人のためなんて言葉、胡散くさく聞こえて好きではありませんが、自分とご

縁のあった人や半径2・3メートルくらいまでに居る人たちに喜んでもらえる存在で

あることができれば。今日も明日も、小市民として生きていきたいと思っています。

前の記事

60回目の秋に

次の記事

ポツンと一軒家