あの頃の自分に逢いに行こう大作戦-前編-
死ぬほど地味な日々を過ごしていましたが、還暦イヤーということでたまには花火を
打ち上げてみよう・・そんな思い付きから、今からちょうど35年前の海外を放浪中に
職探しをしていたゴールドコーストを訪れ、マラソンレース出走となりました。
それにしてもこの状況下での参加、往復のフライトとホテル、そしてPCR検査など
必要な場所への移動以外は全て自由行動でしたが、走ることや思い出の地を訪れる
こと以上に、「人」への興味が大きくなっていました。そして結果。短い期間ではあ
りましたが、彼らに圧倒され続けました。
愛知県から参加の20代女性Tさん。ベストタイムを尋ねると、とてつもないタイム
を口にします。「それって、もう実業団レベルでしょ?」「はい、(実業団の)〇〇
にいます」数年前の東京オリンピック参加資格獲得を賭けたレースで惜敗し、同時
に膝を故障したため競技を引退をしたが、マラソンへの情熱が捨てがたく、今回は
その復帰のステップとしての参加、とのことでした。「次のパリ(オリンピック)
がんばってくださいね」「パリは時間がありませんよぉ」「いや、いや。MGC(代表選
考レース)が何回か残ってるでしょ」我々市民ランナーが笑いながら口にする定番の
ジョークを真顔で言ってる自分に驚いていました。Tさんの健闘を祈ります。
京都から参加の75歳男性Uさん。今回の旅行には、ビザや検疫その他手続きのために
スマホでアプリを取得し、そこから英語での設問に対してあれこれデータを入力と、
大変面倒な手続きをすべて自分でする必要がありました。ところがこの方、つい先日
までスマホの電源の入れ方さえ知らなかったにもかかわらず、万難を排しての参加で
す。その理由は、コロナ禍に見舞われる3年前の前回大会に参加した時には、年代別
(70~74歳の部)で1位になり、今回もなんとしても1位になりたいということで、
買ったばかりのかんたんスマホを放り投げ、アプリ取得などのできる様々な機能の付
いた機種に変更しました。そして、「お金はどれだけかかってもいいからスマホの使
い方を教えてほしい」とショップの店長に掛け合い、10時間以上にも及ぶ個人レッス
ンを受けました。スマホの使い方はあまり覚えていないようでしたが、3年前に大会で
もらった記念品を持参し、同時に自身の名前が掲載された箇所を赤線で囲った当時の
新聞を愛おしそうに見せてくれます。さて、今回のレースの結果は・・・年代別(75
~79歳の部)2位。その年代での参加者は5人だったので5人中2位というのが実情では
あったのですが、「悔しいわあ」が止まりません。「そのお年で完走できるだけでも
すごいですやんか」などとなだめても全く納得せず「1位は誰やろ、タイムはどれく
らいなんやろ」と何度もなんども繰り返します。帰国してこの方に付き合わされる周
囲の人たちも大変だろうなあと思いつつも、こんな情熱を75歳になっても持ち続ける
ことができたら幸せだろうなあ・・と。普段、会うことのないタイプの人と出会うっ
て、とても刺激的ですね。